「高加水パンは水分が多く含まれているらしいけど、どのくらい水分を含んでいると高加水パンに分類されるの?」「普通のパンより作るのが難しそう…」「失敗したらどうしよう」
と疑問に思いますよね。
本記事では、高加水パンの魅力について以下の内容を分かりやすく解説します。
- 高加水パンの基礎知識
- 高加水パンの水分量を導く計算式
- 高加水パンのメリットとデメリット
- 代表的な高加水パンの特徴と美味しく食べれる期間
- 高加水パン作り失敗の対処方法
この記事を読むことで、高加水パンについて知識が深まり、高加水パンの美味しい食べ方や生地作り失敗への不安解消に役立てることができます。
ぜひ最後までご覧ください。
高加水パンとは?
高加水パンとは、水分が多く含まれたパンを意味します。一般的なパンの水分量が60%以下であることに対して、高加水パンは70〜80%の水分を含むことが特徴です。
高加水パンは高温かつ短時間で焼き上げるため、こんがりとした焼き色をしています。「硬そう…」と感じるかもしれませんが、 口当たりが良く、年齢問わず食べやすい魅力があるんですよ。
ご家庭で高加水パンを手作りする際も、水分量を調整することでさまざまな種類のパンを作れます。
次の章からは、高加水パンの加水率について紹介します。
高加水パンの加水率とは?計算式で導き出す方法
加水率とは「粉の量に対して含まれている水分の割合」を意味し、以下の計算式で求められます。
加水率=材料の水分量÷粉の量×100
実際に数値を代入して計算してみましょう。
例:150gの強力粉に120gの水を加えた場合
120÷150×100=80
つまり、加水率は80%と導き出せますね。
この計算式の注意点として、粉の量は小麦粉に限らず、全粒粉や米粉、ココアパウダーなども含まれます。
また、牛乳や卵を混ぜ込むリッチなパンの場合、水分量が多い材料も水分量として考えるため、加算し忘れに注意しましょう。
よく使用される材料の水分量としては、牛乳が約90%、卵が約70%、生クリームが約50%となります。
次の章からは、高加水パンの特徴や気をつけたいポイントについて詳しく解説します。
高加水パンの特徴3つ
高加水パンの特徴は以下の3つです。
- 食感がしっとりしている
- 香りと旨味を感じられる
- パンの老化が遅い
上述したように、高加水パンは水分量が多いことからパサつきが少なく食べやすい魅力があります。
また、小麦の香りや味を感じやすく、日持ちすることも魅力の1つです。1度手作りすることで、日にちを分けて美味しくいただけますよ。
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1. 食感がしっとりしている
高加水パンは、食感がしっとりモチモチとしており、食べやすいことが特徴です。
パンを食べる際「口の中の水分がパンに吸われる」「咀嚼が多くて顎が疲れる」という経験をされた方もいるでしょう。
高加水パンは水分を多く含んでいるため喉越しも良いです。パサつきを気にすることなく、最後まで美味しくいただけますよ。
2. 香りと旨味を感じられる
高加水パンは、普通のパンに比べて香りと旨味を感じられるメリットもあります。なぜなら、酵母(イースト)の含有量が少なく、低温長時間発酵を経て焼き上げるからです。
少量の酵母を低温かつ長時間かけて発酵させることで、芳醇な香りと奥深い味わいのパンが焼き上がります。
3. パンの老化が遅い
高加水パンは老化が遅い、つまり水分が抜けてパサつくことが遅いという特徴があります。
一般的に卵や油、牛乳など水分を多く含むパンは老化が遅く、賞味期限が長く設定されています。
ここで「卵や油を含まないフランスパンやバゲットは、賞味期限が短いの?」と考える方がいるでしょう。
しかし、これらのパンは水を多く使用して作られた高加水パンの1種です。水分が多いため老化が遅く、保存も効くメリットがあります。
高加水パンの気をつけたいポイント3つ
高加水パン作りや食べる際に気をつけたいポイントとして、以下の3つが挙げられます。
- 高さがある形状に焼き上がりにくい
- カビが繁殖しやすい
- 大量生産が難しい
水分を多く含むことから、焼き上がりが扁平的な形状になる特徴があります。
また、カビが繁殖しやすいうえに1度にたくさん焼き上げることは困難です。
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1. 高さがある形状に焼き上がりにくい
高加水パンを整形する際、高さを出した形を維持できないことが特徴です。水分の多さから生地が緩く、焼き上がりも扁平な形状になりやすい傾向があります。
ご家庭で手作りする際「パンの整形過程を楽しみたい」と考えている方は、高加水パンのレシピを控えることが無難でしょう。
2. カビが繁殖しやすい
高加水パンはカビが生えやすいというデメリットがあります。
特にカットしたパンは、断面に水分を多く含んでいることから、空気中に漂うカビと反応しやすい特徴があります。
高温加湿の環境になりがちな梅雨や夏の時期は、直射日光を避けて保存しましょう。
3. 大量生産が難しい
高加水パンは、1度にたくさん焼き上げることが困難です。なぜなら、生地の成形に手間がかかってしまうからです。
高加水パンの生地は粘り気が強く、べたつきやすい特徴があります。素手で成形する場合も手に張り付いてくるため、生地を投げつけたくなってしまうかもしれません。
成形する際には手粉を多く使用しましょう。生地が手に残ることを防ぎ、まとめやすくなりますよ。
代表的な高加水パン|食パンの特徴
高加水パンの1種である食パンには「角型食パン」と「山型食パン」の2種類があります。
角型食パンは、蓋付きの四角い型を使って焼く食パンです。水分の蒸発が少ないため、きめが細かいしっとりしたパンに焼き上がります。
一方、山型食パンは、蓋がない型を使って焼く食パンです。パンの上部が山のように膨らんで焼き上がります。
水分の蒸発が多いため、キメが粗くふわふわした仕上がりになります。
食パンは出来あがり6時間後が食べごろ
食パンの食べ頃は焼きあがり6時間後からです。なぜなら、焼き立てをすぐに切ることで、断面から水分が抜けていくからです。
食パンの耳の部分(クラスト)にまで水分が行き渡り、全体的にしっとりするまで置いておきましょう。食パン特有のしっとり食感を堪能できますよ。
また、食パンを美味しく食べられる期間は、2〜3日です。カットした断面から水分が抜けていき、老化が進みますので、早めに食べるようにしましょう。
代表的な高加水パン|バゲットの特徴
バゲットは高加水パンであり、フランスパンの1種でもあるパンです。長い棒のような形状が特徴になります。
バゲットの材料は小麦、水、塩、イーストとシンプルであり、食パンに比べると食感が硬めです。パンの香ばしさや噛みごたえを存分に楽しむことができるパンといえますね。
バゲットは出来あがり30分後が食べごろ
バゲットは焼きあがり30分後、つまり冷めてすぐが食べごろです。
焼き立てのフランスパンは、水分を多く含んでいるため、パリッとした食感が十分に感じにくい特徴があります。
水分が飛んで30分後の状態まで置くことで、バゲットの醍醐味である外側のパリッと食感、内側のふわふわ食感を楽しめますよ。
また、バゲットを美味しく食べられる期間は、2時間後までと短いです。カットした断面から水分が抜けていき老化が進みます。切り分けたパンは、早めに食べ切ることを心掛けましょう。
2〜3時間が経過すると、カットした断面が空気中の水分を吸収し始めて「表面しなしな、断面パサパサ」という状態になってしまいます。2時間後までにおいしく召し上がって下さいね。
【例外】高加水パンではないベーグルの特徴
ここで、高加水パンではない「ベーグル」についても比較のためご紹介します。ベーグルは、ドーナツの様なリング状のシルエットが特徴的なパンです。
ベーグルは焼く前に茹でる工程(ケトリング)を挟み、バターや牛乳、卵を使用せずに作られる特徴があります。
「もちもち柔らかい」という印象ではなく、「どっしり重たい」という印象です。腹満たしに最適なパンといえますね。
ベーグルは出来あがり30分後が食べごろ
ベーグルの食べ頃は、冷めてすぐの30分後といわれています。ベーグルに含まれる水分がパン全体に馴染み、もちもちとした食感と弾力が一番感じられるからです。
また、ベーグルを美味しく食べられる期間は2日程です。油が使われていないことから、老化が早いので、長期間の保存は控えましょう。
なぜ冷ましてからの方が美味しいのか
高加水パンは、焼き立てよりも冷ましてからの方が美味しくなります。なぜなら、冷ますことで表面まで水分が行きわたり、柔らかくなるからです。
また、パン生地は発酵の過程でアルコールが作り出されます。焼きたてのパンは、水蒸気にアルコールを含んでいるため、アルコール臭を感じやすい傾向があります。
焼き立てのパンを頬張ることも魅力的ですが、風味が気になる方は時間を置いてアルコールを蒸発させましょう。
代表的な高加水パン2種類|水分量や特徴を比較
ここからは、代表的な高加水パン2種類の特徴を各工程ごとに紹介します。
本記事では、食パンとバゲットを水分量60%以下のベーグルと比較しながら解説します。
ベーグル | 食パン | バゲット | |
---|---|---|---|
加水率 | 60%以下 | 60〜70% | 70%以上 |
捏ねる | 粉が多く、まとめにくい | まとまりは早いが、ベタつく | かなりベタつき、捏ねることが困難 |
捏ね上がり | かたくて切れやすい | 柔らかくて伸びる | かなり柔らかい |
一次発酵 | 時間がかかり、上に膨らむ | 約2.5倍に膨らみ、横に広がる | 約2.5倍ほど横広がりに膨らむ |
成形 | かたくて成形しづらい | 成形できるが、少しベタつく | かなりベタつき、成形が困難 |
二次発酵 | 歪な形に膨らむ | 少し横広がりに膨らむ | 横広がりに膨らむ |
焼き上がり | 上に膨らみ、閉じ目が外れやすい | 膨らむが高さは出ず、シワができやすい | 高さは出ず、表面がかたい |
断面 | 弾力が強く、キメが詰まっている | しっとりしており、ところどころに気泡がある | かなりしっとりしており、大きな気泡が目立つ |
3種類を比較した表は以下の通りです。
水分量を変えるだけでも、パンそれぞれの特徴が顕著に現れていますね。ぜひ、パン作りの参考にしてみてください。
高加水パン作りの失敗あれこれ
ここからは、高加水パン作りの際に起こりやすい失敗への対処法を2つ取り上げました。
時間をかけて作ったパン生地を捨ててしまうのは、なんだか心が痛いですよね。美味しく食べられる方法を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
水分を入れ過ぎた生地は粉を加える
水分をレシピより多く入れてしまった生地は、粉を足して徐々に元の固さに戻していきましょう。
ただしこの方法は、少量の水分を間違えてしまった方やパン作りに慣れている方に向いている対処法です。
パン作りに慣れていない初心者の方には難しく感じるかもしれません。フライパンに薄く広げて、パンケーキとして楽しむことをおすすめします。
生地の発酵させ過ぎ・生焼けはアレンジする
発酵させ過ぎたパン生地や、中まで焼けなかったパン生地はアレンジして美味しくいただきましょう。
例えば、油で揚げてきな粉と砂糖をまぶした揚げパンや、卵液に浸して焼いたフレンチトーストなどがおすすめです。
特に過発酵させた生地は、薄く伸ばしてピザ生地にしてしまう方法もあります。トマトソースやピザソースを塗ることで、鼻につく匂いを和らげられますよ。
シンプルレシピなのに奥が深い|高加水パン作りに挑戦してみよう
今回は高加水パンの特徴や種類、美味しく食べる方法について紹介しました。
内容をもう1度確認しましょう。
- 高加水パンは、食パンやバゲットなど水分量が多いパンを指す
- 老化が遅く、香りや旨味を感じやすい。しっとり食感で食べやすい
- カビが生えやすく、生産効率が悪い。高さを出した整形には向いていない
- 焼きたてを冷まして、程よく水分が飛んだ状態が1番美味しい
- 失敗したパン生地は、固さの微調整・リメイクが可能
高加水パンはシンプルな材料とレシピで作れる魅力があります。
しかし、パンの美味しさを引き出す方法は奥が深く、水分量や食べ方次第で味わいの幅が広がる魅力もあります。
今回紹介した内容を参考に、ぜひご家庭で高加水パン作りに挑戦してみてはいかがでしょうか。