プラスチック製のストローはリサイクルすることが難しく、使い終わったら「家庭ごみ」や「燃えるゴミ」として捨てられるのが一般的です。
しかし、リサイクルできない理由について理解している人は少ないのではないでしょうか。
今回はプラ製ストローの問題点や、意外と長いストローの歴史についてご紹介します。
ストローの豆知識やマイストローの選び方などもまとめました。
年々深刻化している海洋プラスチック問題を身近なものとして考えてみませんか。
プラ製ストローは環境によくない?プラゴミが問題視されるようになったきっかけとは
プラスチック製ストローの廃止に取り組む企業が増えていますが、これにはきっかけがあります。
ここではプラ製ストローの問題点や、SDGsとプラゴミの関係について見ていきましょう。
プラ製ストローの問題点
プラスチック製ストローの問題点は、リサイクルが難しいこと、そして海に流されて海洋ゴミになりやすいことです。
プラ製ストローのリサイクルが難しい理由は2つあります。
ひとつは、ストローが細くて小さく軽いため、リサイクル処理の機器の間に挟まってしまうことです。
もうひとつは、リサイクル回収の際にこぼれ落ちやすいことが挙げられます。
では、海洋ゴミになりやすいのはどうしてでしょうか。
細くて小さいストローはポイ捨てされやすく、また適切な場所に捨てられたとしても、ゴミの回収の際に取り残されてしまうことがあります。
ポイ捨てされたストローや回収されなかったストローは、風に飛ばされ雨水に流され、長い時間をかけて排水溝を通り、海にたどり着くのです。
リサイクルされず海に流されたプラ製ストローは、海洋プラスチックごみのごく一部かもしれません。
とはいえ、プラスチック製ストローも海洋汚染の原因のひとつなのです。
プラゴミが問題視されるようになったきっかけ
さまざまな環境問題の中、海洋プラスチックごみが世界的に問題視されるようになったきっかけのひとつは、あるウミガメの動画です。
絶滅危惧種であるウミガメの鼻からプラスチック製ストローが取り出されるという内容の動画でした。
これにより、世界中の人々が海洋プラスチック問題の深刻さに気付いたといわれています。
海洋プラスチックごみ問題は古くから注目されていました。
クジラや海鳥の胃の中から大量のプラスチック製品が見つかったり、海洋プラゴミに絡まったアザラシやオットセイが発見されたりしていたのです。
しかし、海洋プラスチックゴミ問題に注目していたのは、専門家やごく一部の人々でした。
現在のように情報が広がりにくい時代だったため、といえるかもしれません。
近年では、「マイクロプラスチック」によるさまざまな悪影響が問題視されています。
マイクロプラスチックとは微細なプラスチック粒子のことで、もとは海を漂っていたプラスチックゴミです。
非常に小さな粒子であるマイクロプラスチックは、回収が困難なだけでなく、有害な化学物質を吸収する可能性があるといわれています。
やっかいなことに、マイクロプラスチックはプラスチックの破片なので、体内で消化されることはありません。
海洋生物が海水やエサと一緒に体内に取り込んでしまうと、消化器官内に溜まってしまうのです。
その魚を人間が食べた場合、マイクロプラスチックは人間の体内にも入り込むでしょう。
実は、すでに海鳥や海洋生物の体内からマイクロプラスチックが見つかっており、人体から排出されたという報告もあります。
マイクロプラスチックが人体にどのような影響を与えるかについては研究段階です。
しかし、なんらかの健康被害を受ける可能性があるとして問題視されています。
SDGsとプラゴミの関係
マイクロプラスチックや海洋プラスチック問題は、SDGsの掲げる17の目標のうちの3つと関係しています。
SDGsとは日本語に訳すと「持続可能な開発目標」で、世界のすべての人々が豊かで平和に暮らせる社会を目指すために設定された世界目標です。
ここでは、プラスチックと関係のあるSDGsの目標3つについて簡単に説明します。
目標3:すべての人に健康と福祉を | すべての人が健康で安心して生活できるように、病気の予防などの福祉を推進する、環境汚染を減らすなどを目標としている |
目標12:つくる責任つかう責任 | 地球に負担のない生活を送るために、資源の無駄遣いや過剰生産を減らす、リサイクルを促進するなどを目標としている |
目標14:海の豊かさをまもろう | 海と海の資源を守りながら持続して利用するために、海洋汚染を防ぐ、海の生態系を保護するなどを目標としている |
マイクロプラスチックや海洋ゴミの問題は、特に目標14の「海の豊かさをまもろう」と深く関わっています。
海に流れ込むプラスチックゴミは年々増加していて、このまま何も対策をとらないでいると、2050年には魚の量を上回るといわれているのです。
プラスチックやマイクロプラスチックは、海洋汚染や海の生態系の破壊の原因となっており、多くの国や企業がプラゴミの削減に取り組んでいます。
プラゴミ削減に向けた取り組みには、「レジ袋の有料化」や「レジ袋の使用禁止」などがあり、「プラ製ストローの廃止」もそのひとつです。
プラスチック製ストローの廃止に取り組んでいる国には、アメリカやヨーロッパ、台湾、そして日本が挙げられます。
スターバックスやマクドナルド、すかいらーくグループなどの大手企業はプラ製ストローの廃止に取り組み始めているため、ご存じの方も多いでしょう。
プラ製ストローの廃止には、海洋プラゴミを減らして海洋汚染の拡大を防ぐ、温室効果ガスを減らして地球温暖化対策をするなどのメリットがあります。
地球環境の改善効果が見込まれるのは、プラ製ストローが身近なものとして世界中に浸透しているから、といえるでしょう。
また、脱プラスチックに向けた取り組みでプラ製ストローが対象になった理由として、「なくてもそれほど困らないから」という点が挙げられます。
ストローはいつからあった?意外と長いストローの歴史
「なくてもそれほど困らない」プラスチック製ストローは、いつから一般的なものになったのでしょうか。
ここでは意外と長いストローの歴史や、ストローの豆知識について見ていきましょう。
ストローの歴史
プラスチック製ストローが普及し始めたのは、1960年代だといわれています。
しかし人類はもっと以前からストローを使っていたのです。
はじまりは古代メソポタミア時代
人類がストローを使うようになったのは、今からおよそ4000年~5000年前にあたる、紀元前3000年頃と考えられています。
世界最古の文明とされる古代メソポタミア文明を築いたシュメール人は、楔形文字や絵を使って、当時の出来事などを粘土板に刻み付けていました。
粘土板には、ビールの製造方法の様子や、ストローのような細長い物でビールを飲む様子が刻まれていたのです。
当時のビールは原始的な製法で造られていたため、麦の茎などをストローにして麦の殻や粒をよけて飲んでいたのでは、といわれています。
紙製ストローの誕生
初めて紙製ストローが登場したのは、1888年のアメリカです。
巻紙タバコの製造業を営んでいたマーヴィン・ストーンという男性が発明したといわれています。
紙ストローのアイディアが浮かんだのは、彼がライ麦の茎で冷たい飲み物を飲んでいるときでした。
彼はパラフィンコーティングされた紙を鉛筆に巻き付け、紙製ストローの試作品を作ったのです。
特許を取得後、1890年にはタバコの製造工場で大量生産するようになり、1906年には手巻きから機械巻きになりました。
プラスチック製ストローの誕生
紙製ストローがプラスチック製に切り替わったのは第二次世界大戦以降です。
世界で初めて工業化されたプラスチックは「セルロイド」で、開発されたのは1860年代のアメリカでした。
その後、各国でさまざまな新しいプラスチックが発明されるようになります。
プラスチックには電気を通しにくい、軽くてサビないなどの特性があり、やがて安く大量に生産できる素材として幅広く使われるようになりました。
さまざまなプラスチック製品が作られる中、ストローもプラスチック製のものが誕生します。
プラ製ストローは紙製ストローよりも耐水性が高く、また加工しやすいこともあり、1960年代になると大量生産されるようになったのです。
やがて使い捨てできる便利なプラスチック製品として世界中に広まり、1980年代には太めのストローや曲がるストローなどが誕生します。
日本におけるストローの始まり
日本で最初にストローが生産されたのは明治時代であるといわれています。
古代メソポタミアのシュメール人が使っていたストローと同じ、麦の茎を利用したものでした。
明治時代、農家の副業として盛んに行われていたのは、麦わらを真田紐状に編んだ「麦藁真田(むぎわらさなだ)」の生産です。
麦藁真田の技術はヨーロッパから伝わったもので、明治34年ごろになると麦藁真田を用いた麦わら帽子の生産が始まります。
麦の産地のひとつである岡山県浅口市でも麦藁真田が盛んに生産され、アメリカやフランスなどに輸出するようになりました。
麦藁真田の材料である麦わらをストローとして販売することを思いついたのは、浅口市の「川崎三一」という人物です。
岡山県浅口市は、日本における麦わらストローの発祥の地といえるでしょう。
その後、麦の生産量の減少や刈り取りの機械化などで材料の確保が難しくなると、紙製ストローが導入されるようになります。
やがて日本でもプラスチックの大量生産が始まり、1950年代には紙製ストローからプラ製ストローに切り替わりました。
日本のストローの素材も、最初は麦の茎、次は紙、そしてプラスチックという流れだったのです。
ストローの豆知識
ここではストローにまつわるちょっとした知識をご紹介します。
あまり知られていないストローの豆知識を3つまとめました。
曲がるストローの開発者は誰?
好きな角度に曲げることのできるストローの開発者は2人いるといわれています。
1人目は、割りばし製造機やYシャツのプレス機、生理用品などの発明家である坂田多賀夫さん、日本人です。
きっかけは、発明のヒントを得るために訪れた欧米の病院で、チューブを使ってコップの水を飲む寝たきりの患者さんの姿を見たことでした。
彼は、楽器のアコーディオンや折り紙をヒントに、曲がるだけでなく角度を固定できるストローを誕生させたのです。
もう1人、アメリカのジョセフ・フリードマンという発明家も曲がるストローを開発したといわれています。
年代的にはアメリカでの発明が先ですが、詳しい記録はあまり残されていないようです。
ストローで飲み物を飲めるのはなぜ?
ストローでコップに入った水やジュースなどを飲めるのは、口で吸う力によるものではなく、大気圧によるものです。
大気圧とは空気の重さによって生じる圧力のことで、コップの中の飲み物には均等に圧力がかかっています。
ストローで吸うとストロー内の空気が減るため、ストロー内の気圧だけが小さくなり、その結果飲み物が上昇するのです。
簡単にいうと、空気を吸うことで飲み物を上昇させて口に入れている、ということになります。
また、ストローにジュースなどを入れた状態で吸い口側をふさぐと、ジュースがこぼれませんよね。
これも大気圧が関係していて、ストロー内のジュースの重さよりも、下からかかる気圧のほうが大きいからこぼれないのです。
シュメール人はマイストローを使っていた?
人類で初めてストローを使ったとされるシュメール人の中には、マイストローを持っていた人もいたそうです。
当時は麦や葦の茎が一般的だったようですが、身分の高い人は金属製のストローを使用するなど、身分差があったと考えられています。
装飾を施した金や銀の「マイストロー」を使う人もおり、亡くなったときには一緒に棺桶に入れて埋葬されていました。
近年では、コーカサス地方の古墳から見つかった長さ1メートル以上の金属製の棒が「世界最古のストロー」では、といわれています。
金属製の棒と同時に、ビールに含まれる不純物のろ過装置も発見されました。
当時の人々は、共同の大きな壺に金属製の「マイストロー」を差し込んで、複数人でビールを飲んでいた…と考えられているそうです。
環境に優しいストローは?エコストローは種類が豊富!
プラスチック製以外の環境に優しい「エコストロー」にはさまざまな素材のものがあります。
ここでは使い捨て可能なタイプと、繰り返し使えるタイプのストローに分けて見ていきましょう。
それぞれのメリット・デメリットをまとめましたので、マイストロー選びの参考にしてみてください。
使い捨てタイプのストロー
使い捨てできるエコストローの素材には、紙、お菓子、麦わら、サトウキビ、木、お米、パスタなどがあります。
以下にそれぞれの特徴をまとめました。
メリット | デメリット | |
紙ストロー | リサイクルも焼却処分もできるプラスチックの原料の枯渇対策になる | 長時間使用するとふやける使用感が悪い唇が乾燥していると切れることがある |
お菓子ストロー | 食べられるのでゴミが出ない | 吸いにくい |
麦わらストロー | 完全自然由来である使用後は自然に還る | アレルギーのある人には不向きである長さや太さが均一ではない |
サトウキビストロー | 廃棄物のアップリサイクルになる 堆肥化できる 比較的耐久性が高い | ほのかな甘みと香りを感じることがある割れると口を切ることがある |
木製ストロー | 間伐材を使うことで森林保全につながる洗って完全に乾燥させると複数回使用できる | 木の香りが気になることがある |
米ストロー | 食べられるのでゴミが出ない | 価格が高めである |
パスタストロー | 食べられるのでゴミが出ない | アレルギーのある人には不向きである |
繰り返し使えるタイプのストロー
繰り返し使えるエコストローには、竹、金属、ガラス、シリコーンで作られたものがあります。
こちらもそれぞれのメリット・デメリットをまとめました。
メリット | デメリット | |
竹ストロー | 抗菌作用があり衛生的である耐水性・耐久性に優れている | しっかり乾燥させないとカビが発生しやすい使い始めは竹の匂いが気になりやすい |
金属ストロー(ステンレス・アルミ・チタンなど) | 丈夫で長持ちする | 金属アレルギーの人は注意が必要である |
ガラスストロー | 透明で中が見えるためオシャレ感がある匂いが気にならない | 衝撃に弱い |
シリコーンストロー | 柔らかく口当たりが優しい軽くて折りたたむこともできるため持ち運びしやすい | ゴミがつきやすい匂い移りしやすい |
このように、エコストローには素材によってさまざまな特徴があります。
素材で選ぶ場合はメリット・デメリットを考慮するとよいでしょう。
マイストローのメリットは?選び方も解説
エコアイテムのひとつであるマイストローにはさまざまなメリットがあります。
ここではマイストローの3つのメリットと、マイストローの選び方のポイントをまとめました。
マイストローの3つのメリット
マイストローのメリットは主に次の3つです。
- プラゴミ削減につながる
- 環境問題を意識するようになる
- ざまざまなデザインから選べる
リサイクルの難しいプラスチック製ストローではなく、繰り返し使えるマイストローを使うことで、プラゴミの削減につながります。
日常生活にマイストローをとり入れることで、いかに多くのプラ製ストローを使い捨てていたかに気づくことができるでしょう。
マイストローを使うたびに、プラゴミ以外の環境問題への関心も高まるかもしれません。
また、マイストローは種類が豊富なので、好みのデザインを選びやすい点もメリットのひとつです。
お気に入りのマイストローを見つけ、毎日の生活に取り入れてみませんか。
マイストローの選び方
マイストローの選び方のポイントは次の3つです。
- 素材で選ぶ
- 長さ・太さで選ぶ
- 使い勝手のよさで選ぶ
ぜひマイストロー選びの参考にしてみてください。
素材で選ぶ
繰り返し使えるストローは、素材によって使い心地や耐久性などが異なるため、素材の特徴を基準にして選ぶのもおすすめです。
どのようなシチュエーションで使うのかを想定し、あなたにぴったりの素材を選んでみてください。
長さ・太さで選ぶ
マイストローにはさまざまなサイズがあるので、よく使う長さ・太さのものを選ぶと失敗しにくいです。
市販のカップ入りドリンクなら20センチ前後、ペットボトルや高さのあるグラスの場合は25~30センチ程度のストローが向いています。
長すぎてコップが倒れやすい、逆に短すぎて届かない…とならないためにも、普段よく使う容器のサイズを確認しておくとよいでしょう。
シリコーン素材のストローであれば、切って長さを調節できるタイプもありますよ。
また太さは6ミリ程度のものが一般的ですが、ドリンクの種類に合わせて8~10ミリ前後のストローを選ぶとよいでしょう。
使い勝手のよさで選ぶ
洗いやすさや持ち運びしやすさなど、使い勝手のよさで選ぶ方も少なくありません。
洗いやすいものには、洗浄ブラシ付きタイプや開いて中まで洗えるタイプなどがあります。
持ち運びのしやすさで選ぶなら、専用ケース付きやたたんで収納できるストローを選んでみてはいかがでしょうか。
プラ製ストロー廃止には問題点がある?プラ製ストローの必要性とは
世界的にプラ製ストロー廃止の動きが広がっていますが、プラ製ストローがなくなると困るという声も上がっています。
プラ製ストローの中でも曲がるストローは、体に不自由のある方にとって欠かせないアイテムのひとつです。
そもそも曲がるストローは、寝たきりの患者さんが飲みやすいようにと考案されました。
紙製や金属製など、代替品の使用を試みている病院や施設などもありますが、使用感や衛生面などに問題があるといわれています。
プラ製ストローの廃止など、脱プラスチックの取り組みも大切です。
しかし、プラ製ストローの必要性についても考えるべきといえるでしょう。
ストローの歴史を知り環境問題を意識しよう
今回は、ストローの歴史や環境問題との関係性、マイストローの選び方についてご紹介しました。
プラ製ストローは海洋汚染の原因のひとつであり、多くの国や企業が廃止に向けて取り組み始めています。
ストローを最初に使った人類は古代シュメール人で、ビールを飲むのに使ったといわれているので、ビールを飲むたびにストローを思い出すかもしれませんね。
お気に入りのマイストローを見つけ、脱プラスチック生活や環境問題を意識してみませんか。