近年、日本では地震や集中豪雨による洪水被害が発生しており、これに伴う災害対策が大きな課題となっています。自治体や企業だけでなく個人でも、万が一の場合に備えて防災用品を備蓄する必要があるといわれています。
防災用品として確保しておきたいものは、食料、電気、薬などいろいろありますが、この中で非常に大事なのは「水」です。
食べ物なしでもある程度耐えられるでしょう。しかし水がなければ短時間で死に至ります。また、水はけがをした時に傷口を洗えるのです。
それではこの水をどのように確保、保管すればよいのでしょうか?この記事では防災に向けた水の確保の手段について解説します。
災害時を想定し水を備蓄しておくその理由
災害時にまず確保しなければならないものは水だといわれています。また、災害発生に備え、人数分の水確保は必須ともいわれます。
そこまで水の備蓄が重要な理由はでしょうか?それは近年、日本では自然災害による被害が多発していることに関係しています。
日本は自然災害の多い国
古来より日本は自然災害が多い国です。さらに近年は毎年のように自然災害の脅威を見聞きすることが増えました。地震だけでなく、台風、大雨、土砂崩れ、火山噴火など災害の種類も多岐にわたります。
特に脅威となるのが地震です。世界でも小さいほうに入る日本という国で、世界の大規模地震の実に1/5もの数が発生しているのです。
どうして日本なのか、それには理由があります。地震の場合、日本は巨大な板状の岩が衝突する海溝などの近くやその上に地面がある為です。
台風は日本のはるか南で発生しますが、風や高気圧の影響で北東に移動し、最終的に日本に上陸します。活火山の数が多いことから火山噴火の災害も発生しやすいのです。
このように日本は災害発生の条件がそろっている場所と言えるのです。
災害時、真っ先に必要になるのが、水
大地震や洪水によりライフラインが絶たれた時、重要な問題となるのが水の確保です。広範囲で被災した場合、全域に水が届くまでに最大1週間以上かかる場合があります。
水は、飲料水としてだけでなく食事の準備、排せつ、衛生面などあらゆる状況で必要不可欠です。単に水の確保だけではなく、いかに節水するかについても考えねばなりません。
あらゆる場面で必要となる水
水はこのようにあらゆる場面で必要となりますが、もう少し詳しく解説しましょう。なぜ水が必要なのか?水がなくなったらどうなってしまうのか?理解を深めてみましょう。
水は人が生きるために必須
水が皆さんにとってどのぐらい重要なのかもう少し詳しく理解しましょう。私たちの体の60〜80%は水であり、その量から水を失うことは生命にかかわることが理解できるでしょう。
水は体内循環と排泄に使用されます。これに加えて、呼吸や発汗など人間の体からは常に水が失われているため、水分補給を怠るとすぐに脱水症状に陥ります。
体内の水分が不足すると様々なトラブルを引き起こし、最悪死に至る可能性もあります。体重の約2%を失うだけで喉の乾燥や食欲不振を引き起こす可能性があります。
さらに10%の喪失は、けいれん、意識障害、腎不全などの深刻な状態につながる可能性があります。
緊張状態が続く災害の直後は、疲労やストレスの蓄積で誰もが病気になりがちです。飲料水の備蓄は、生命を維持する上で非常に重要な要素であると言っても過言ではありません。
生きていくためにどのぐらいの水が必要なのか?
1人に対し、1日でどのぐらいの水が必要なのでしょうか?
概ね大人1名に対し、3リットルの水が必要だといわれており、うち2リットルが飲料水として、残りが生活用水になります。生活用水の内訳は、洗面、排せつ、掃除、など様々な用途があります。
このように我々は日常で実に多くの水を使って生活しています。
災害時に使用できる水は限られています。使用方法も含めて、3L(飲用水2L +家庭用水1L)×家族の人数分を備蓄する必要があります。
現在、10〜14日備蓄するのが一般的です。長期間保存できる水は便利ですが、ペットボトルに水道水を保存する場合は、蓋をして2〜3日以内に交換する必要があります。いずれの場合も、水質の悪化を防ぐためにしっかりと覆い、直射日光の当たらない涼しい場所に保管する必要があります。
水が使われるシーン
人間がどのようなシーンで水をどのぐらい使っているのか?もう少し詳しく解説しましょう。大きく3つのケースがあります。
1. 水分補給やトイレ
1つ目は水分補給と排せつです。水分補給は人間にとって一番必要な部分ですが、同時に排せつも重要と言えます。
- 水分補給:1日あたり2リットル〜2.5リットル
- トイレ:1回につき10リットル、ただし被災時は使えない可能性が高い
2. 食事のため
2つ目は食事です。最近では調理不要な非常食もありますが、完全に水抜きとはいきません。食事もかなりの量の水を必要とします。
3. 衛生を保つため
3つ目は衛生面に関する部分です。手洗い、歯磨き、洗面など多くのシーンで必要となります。
特に入浴などは1回で相当の水を使うため災害直後は不可能と言えます。ウェットティッシュやおしりふきなどの準備をするようにしましょう。
子供や高齢者は特に注意が必要
災害により避難生活を余儀なくされている場合、子供やお年寄りの脱水症状には特に注意する必要があります。
子供は汗や呼吸によって失われる水分の割合が高いわりに自覚症状が出るのが遅く、発見が遅くなる傾向があります。発見されたころにはすでに手遅れというケースも少なくありません。
加齢により水分量が減少した高齢者も脱水症状を起こしやすい傾向にあります。場合によっては、トイレに行く回数を減らしたいので、水分補給を控えます。
コロナ渦ではマスクの着用が当たり前になっており、水分が足りなくてもマスクのムレで気づかない場合が多くなっています。また、多くの人はマスクを着用して水分補給自体がおっくうになっているケースもあるでしょう。
脱水症状には、喉の渇き、皮膚の乾燥、目と口の乾燥、頭痛、発熱、気分の悪さ、症状の進行に伴う意識混濁などがあります。また、脱水症状による心筋梗塞、脳梗塞、エコノミークラス症候群などにもご注意ください。
「食欲不振」や「気分が悪い」などの些細な兆候を見落とさないようにし、高温多湿にならないように環境に配慮しながら定期的な水分補給を促すことが重要です。
水の備蓄はどうやってすればよいのか?
ペットボトルとウォーターサーバーボトルは、飲用と食事用の水として最適です。家庭用水は新鮮でなくても問題ありません。東日本大震災では、避難所となった学校のプールから水を汲み上げ、バケツに貯めた雨水を飲料水以外の目的で利用しました。
以前、私は浴槽に水を貯めるように言われました。ただし、お風呂自体が汚れていると、瞬く間に水が腐ってしまいます。キャンプ用の水タンクまたは水差しを使用して水を貯めることをおすすめします。
給水車から水を汲みたい場合は、ゴミ袋とダンボールを使って簡単な貯水タンクを作ることがおすすめです。給水車はいつもあなたの家のすぐ近くに来るとは限りません。
停電が発生した場合、エレベーターは利用できなくなりますので、水を貯め、緊急階段を利用して帰宅する必要があります。 その際、リュックサックにゴミ袋を入れて水を確保すれば安全で持ち運びも簡単です。
備蓄には「ローリングストック法」がおすすめ
災害時に備えて防災グッズを補完することは金がかかり、さらに備蓄場所確保が必要です。
その時有効なのがローリングストック法です。
ローリングストックはその名の通り、普段の生活で利用しながら、災害時に利用する水などをストックする方法です。簡単に言えば常に災害時に必要な量の水や食料をストックし、食べたり飲んだりしながら都度不足分を買い足していくのです。
こうすることで常に備蓄しながら、消費期限を過ぎてしまうことなく保管できる、ということになります。便利なのでローリングストック法について調べ、ご自宅でローリングストック法を運用されてはいかがでしょうか。
浄水器を準備する方法も有効
最近浄水器は持ち運び可能になり、大量の水を運ぶことが難しい野外活動でよく使用されます。持ち運びに最適なボトルタイプとストロータイプがあり、内蔵のフィルターが水中の不純物を取り除き、安心して飲めるのです。
周りに飲料水がなく水が見つからない場合は、独自の浄水器を作ることができます。
まず、ペットボトルのキャップにいくつかの穴を開けます。次に、ペットボトルの底をナイフまたははさみで切り、ティッシュ、小石、木炭、小石、ティッシュの順に入れます。
そして下から水を注ぐと、キャップから飲料水が出てきます。
これには、木炭とナイフとはさみを手元に用意する必要がありますが、非常に困難な状況でも飲用水を飲むことは可能です。
断水発生に備えてほかにもできることがある
断水発生に備え、ほかにもできることがあります。水が確保できる給水ステーションの場所の確認や、普段から節水する方法の検討などです。
災害時給水ステーションの場所確認
大災害が発生した場合、市内全域に整備されている「災害時給水ステーション」で誰でも飲料水を手に入れられます。しかしながらどこで水を手に入れられるかなどの情報を入手する必要があります。
近くの災害給水所に関する情報は、区役所が配布しているスマートフォン無料アプリ「ロケスマ」「全国避難所ガイド」「災害給水マップ」などがあります。
TwitterなどのSNSで情報を収集することも可能です。お住まいの市町村、消防署、自衛隊などをフォローしておきましょう。
水を節約する生活方法の検討
何より重要なのは節水方法です。食器を洗う必要がないように、お皿にラップを貼って食べる、洗うときは重曹を使うことで少量の水で洗えるようにするなど、節水を心がけましょう。
災害時に備え、水を備蓄しよう
いかがだったでしょうか?日本は何より災害の多い国であり、防災に備えるべきです。何より防災グッズの準備や水の確保は必須事項となります。
この記事を参考に、皆さんも防災対策や水の備蓄を考えてみてはいかがでしょうか?